Associazione Italiana del Duce -ドゥーチェのイタリア協会へようこそ!-

同人サークル"Associazione Italiana del Duce"の公式ブログです。

第二次世界大戦時のイタリア軍を描いた戦争映画を見てみよう!

第二次世界大戦を描いた戦争映画といえば、イメージするのはどの国だろう。

スターリングラード』『フューリー』『ダンケルク』『男たちの大和』『Uボート』などなど、ドイツ軍、アメリカ軍、日本軍、ソ連軍、英軍....大体その辺が多いだろう。故にこれらの第二次世界大戦時の軍事は一般的によく知られている。

では、イタリア軍を描いた戦争映画はどうだろうか。

うん、マイナーだ。あまり知られていない。イタリア軍の実態を勘違いする人が多いのはこういうとこにも理由があるんだろう。

というわけで、ドイツ・日本と共に枢軸国の一角を担った主要交戦国イタリアの雄姿を描いた戦争映画を8つ紹介しよう!是非皆さんにも見てもらいたい!(宣伝)

 

砂漠の戦場エル・アラメン

f:id:italianoluciano212:20180904211151j:plain

『砂漠の戦場エル・アラメン』

まず、最初に紹介するのは『砂漠の戦場エル・アラメン』。

1969年公開の映画で、原題は"La battaglia di El Alamein"のイタリア映画だ。

その名の通り、第二次世界大戦時の北アフリカ戦線における「エル・アラメインの戦い」を描いた映画である。

この映画で主役となるのは空挺師団「フォルゴーレ」である。「フォルゴーレ」の名をご存知の方も多いはずだ。

そう、エル・アラメインの戦いで装備が不足する中、圧倒的物量を誇る英軍に対して獅子奮迅の活躍をした部隊だ。イタリア軍のエピソードでも特に有名である。ラストシーンでは、史実の火炎瓶と地雷だけで英軍戦車と戦う空挺兵たちが描かれている。

f:id:italianoluciano212:20180904221643j:plain

実物のイタリア戦車が動く!走る!撃つ!撃破される!

「フォルゴーレ」のほかにも、戦車師団「アリエテ」として実物のイタリア軍戦車が何輌か登場するのが見もの。本物のイタリア戦車が動くぞ!

伊軍司令官のバスティコ元帥と独軍司令官のロンメル元帥の作戦会議では、バスティコ元帥はドイツが石油を供給するという約束を守っていないので、イタリア主力艦隊が燃料不足で出撃出来ずに輸送船が英軍の攻撃でボコボコにやられていると言っているが、実際もそうであった。なお、史実でも両者は仲が悪かったらしい。

対する英軍側は枢軸側の輸送船への攻撃の映像を見る場面があるが、この時移されているのは実際の映像。英空軍機の反跳爆撃で輸送船が撃沈されるシーンが見える。

詳しく書くとネタバレになるので書かないが、その他、小ネタも多く結構色々面白い作品だ。バグパイプを吹いて前進するスコットランド部隊、正義感の強い英軍士官、配給制の水を勝手に飲んで懲罰を受ける兵士、ヒトラー暗殺計画へのロンメルの関与を示唆するシーン、「マカロニ作戦」的な作戦などなど。日本語版もあるのでぜひおすすめ。

f:id:italianoluciano212:20190105212837p:plain

作戦会議をする北アフリカの伊独司令部。左はバスティコ元帥、右はロンメル元帥。

史実の将軍たちも多く出てくる。イタリア軍だとバスティコ元帥、ドイツ軍ではロンメル元帥を始めとして、シュトゥンメ将軍、バイエルライン将軍、フォン・トーマ将軍、更にロンメルが一時帰国した際のシーンではカナリス提督も出てくる。

英軍ではオーキンレック将軍とモントゴメリー将軍が出てくる。モントゴメリー将軍役の俳優はやたら似ている。将軍たちの人間ドラマも面白い。これも見どころの一つ。

あと、実際に第二次世界大戦時に将軍だったジュゼッペ・カステッラーノ将軍が脇役で出演しているらしい。なお、カステッラーノ将軍自身は北アフリカ戦線で指揮した経験はなく、ユーゴスラヴィア侵攻でアンブロージオ将軍の副参謀長を務め、後に統合参謀総長となったアンブロージオ将軍と共に休戦工作で活躍した人物である。

 

炎の戦線エル・アラメイン

f:id:italianoluciano212:20180904212003j:plain

『炎の戦線エル・アラメイン』

続いても、「エル・アラメインの戦い」を描いた作品だ。
『炎の戦線エル・アラメイン』。2002年公開の映画で、原題は"El Alamein - La linea del fuoco"。こちらでは、「フォルゴーレ」と同様に南部戦線で戦った歩兵師団「パヴィア」の戦いが描かれる。主人公は、新たに「パヴィア」師団に配属になった新兵。パレルモ出身の大学生志願兵で、"Volontario universitario"の略称である"V.U."の腕章が見える(序盤で腕章を外すことになるが)。

f:id:italianoluciano212:20180904221740j:plain

過酷な砂漠の前線の様子が詳細に描かれている。イタリア軍の戦いの実像や前線の物資不足がわかり、強烈な印象のあるシーンが多い。飢えと渇き、赤痢が蔓延する前線、昼はうだるような暑さ、夜は凍える寒さの砂漠.....迫力のシーンだと、イタリア軍迫撃砲vs英軍狙撃兵や、終盤の夜間防衛戦あたりだろうか。ラストシーンもツラい。

「砂漠パスタ」発言をする人々に是非見せたい映画である。前線におけるイタリア兵の食事事情もよく描かれているからだ。砂交じりの粥、「死んだアラブ人」という蔑称を持った牛肉の缶詰...。水もガソリン交じり。とてもマトモな食事ではない。ラクダを手に入れた時はラクダの肉をグリルで焼き、オリーブオイルとローズマリーで味付けしている。これは前線の兵にとってかなりのごちそうだったことだろう。対照的に英軍はちゃんとした食事を取っているのもイタリア兵の苦境を増幅させる。補給水を輸送した兵が主人公らに酒を渡すシーンがあるが、この時渡す酒はグラッパ。『砂漠の戦場』ではワインだったので、この差も面白い。多分こっちの補給兵は北部出身なのだろう。「酒がないから勝てないんだ」という発言も面白い。

『砂漠の戦場』とは異なり、終始陰鬱な雰囲気である。エリート部隊であった「フォルゴーレ」師団とは異なり、「パヴィア」師団のいた南部戦線は完全に「見放された戦場」であったことがわかる。『砂漠の戦場』と見比べても、物資や装備の不足が明らかである。イタリア軍部隊でも差が大きかったことがわかる。なお、この映画でも友軍として「フォルゴーレ」師団や「アリエテ」師団も登場する。

『砂漠の戦場』が様々な視点のシーンがあったのに対し、『炎の戦線』は一貫してイタリア軍の「パヴィア」師団の視点のみである。

f:id:italianoluciano212:20190105220914j:plain

迫撃砲手のタロッツィは印象に残るキャラクターだ。

戦争映画お決まりのシーンだと、「ドイツ軍との不和」と「補給物資が残念なモノ」がある。前者がイタリア戦争映画ではお決まりだ。ドイツ軍は自分たちだけさっさと撤退してイタリア軍を見捨てる、というもの。根に持ってることがよくわかる。後者は、道に迷った補給車の中身を確認すると、アレクサンドリア制圧時にムッソリーニ統帥がパレードをするための黒い馬と、行進する兵のための大量の靴磨きクリームだった...というもの。実際、ムッソリーニ統帥はアレクサンドリア制圧寸前と聞いて自ら航空機を操縦して北アフリカの前線にやってきていたが、結局伊独軍の進軍は失敗したのでアレクサンドリアでの行進も実現しなかった。

前線兵の状況を理解しようともせず、自分だけは安全な陣地に隠れて負けを信じない無能な大佐や、戦死したリビア人の副官を兵士の手を借りずに自ら埋葬し、その後自決する将軍など、イタリア軍高官の光と闇(?)も描かれている。

f:id:italianoluciano212:20190105221341j:plain

トラックに積まれたのは大量の靴磨きクリームと統帥の黒い馬だった。

イタリア軍が食糧、装備のみならず、移動手段が少なかったこともよく描かれている。退却するドイツ軍に助けを求めるも無視され、その後退却する友軍に助けを求めるもトラックが満員だと無視され....更にようやく手に入れたトラックも走行中に英空軍の爆撃を受けて破壊され、徒歩で砂漠を何十kmも歩くハメになるという悲惨な状況である。その徒歩で拠点を移動する中、その目的地が途中で陥落したことを告げられ、目的地が変更し、更に100km歩く...とどんどん絶望的になっていく。

 

好敵手

f:id:italianoluciano212:20180904212712j:plain

『好敵手(I due nemici)』

次は、珍しい第二次世界大戦時の東アフリカ戦線を描いた映画、『好敵手』だ。原題は"I due nemici"。

1961年公開のガイ・ハミルトン監督の伊英合作映画で、伊軍と英軍の戦いと、伊軍将校と英軍将校の奇妙な友情をコメディ調を交えつつ描いている。

伊軍将校役はアルベルト・ソルディで、英軍将校役はデヴィッド・ニーヴン

f:id:italianoluciano212:20190818122224p:plain

アスカリ兵やエチオピアレジスタンスも登場する。多くの人に楽しめる良い作品でオススメなのだが、TV放映はされたものの、日本版でDVDは出ていないのが難点。

AmazonでDVDを注文する事をおススメする。

 

I due colonnelli

f:id:italianoluciano212:20180904213310j:plain

"I due colonnelli"

先日見た作品。せっかくなのでここで紹介。

前の映画に名前が似ているが、構成もよく似ている映画"I due colonnelli"。意味は「2人の大佐」。作中に登場する伊軍と英軍の大佐を表す。1963年公開。
伊軍大佐役の役者は現在でもイタリアで人気の高い喜劇俳優トト。

設定としては、1943年のギリシャ戦線を描いており、ギリシャアルバニア国境の山岳地帯での伊英両軍の攻防戦を描き、ドイツ軍も登場する。

1943年なので、ギリシャは既に降伏しており、イタリア軍ギリシャ占領統治を描いている。登場する英軍はギリシャに上陸した部隊だろう。

『好敵手』とよく似たシナリオの作品で、伊軍将校と英軍将校の間に奇妙な友情が芽生え、それに加え、イタリア映画あるあるの「頭の固い」ドイツ兵が描かれている。ドイツ軍将校が秒単位で時間を気にするって部分もステレオタイプで面白い。

f:id:italianoluciano212:20180904221942j:plain

一番の見どころはクライマックスで、ピンチのところで英軍が助けに来て、「ドイツ軍はもう君らの同盟国ではない。9月8日、バドリオ元帥は英国、フランス、アメリカと休戦をした」って言うの最高に面白い。

伊兵「戦争は終わったー!」
英軍大佐「いや、戦争は終わらない。君らは我々と一緒に戦うんだ」

まぁ史実的に怪しい部分も結構あるが、映画の演出としてヨシとしよう。面白いし。基本はパロディ路線なので、「これが史実!」とは思わないでほしい。

ただ、この映画は日本語版がない。哀しい。

 

激動ヨーロッパ戦線

ファシズムムッソリーニの野望―

f:id:italianoluciano212:20180904214444j:plain

『激動ヨーロッパ戦線―ファシズムムッソリーニの野望―』

2002年に放映された、テレビ映画『激動ヨーロッパ戦線―ファシズムムッソリーニの野望―』。原題は"La guerra è finita"。

前後編に分かれた映画で、前編は開戦~ギリシャ戦線~ロシア戦線までを描き、後編で休戦~イタリア内戦(RSI軍vsパルチザン)~戦後までを描く。

つまりは、戦時中にイタリア軍が体験した戦線の多くが描かれている。クラウディオ、エットレ、ジュリアの3人の大学生は戦争の勃発によってそれぞれの道を歩む。映画館のシーンでは実際のイタリア軍のフランス侵攻の映像が流れる。

戦時下のイタリアを生々しく描いた作品。休戦以降は両陣営(RSI側とパルチザン側)の光と闇を描いている。パルチザン神話に基づくものでなく、RSI側にも光を当てている良い作品である。ヒロインのジュリアが中々の悪女。

f:id:italianoluciano212:20190115213053j:plain

GUF(ファシスト大学生連盟)に所属する三人

アレッサンドロ・ガスマンが演じるクラウディオ・ヴァルチは、MVSNの士官に志願。中隊長としてギリシャ戦線に出征する。ギリシャ戦線におけるイタリア軍の装備不足、英軍の増援によるイタリア軍の敗走が描かれている。この時、クラウディオはガルビアーティ将軍の部隊に属している。ガルビアーティ将軍はMVSNの将軍で、1941年5月には本国に召還されて最後のMVSN総司令官に任命された人物である。作中には本人は登場しないが、設定上クラウディオは彼の部下に当たる。なお、クラウディオはMVSN高官(アドリアーノ・ヴァルチ)の息子である。

ギリシャ戦線では凍える寒さの塹壕戦が描かれており、アルピーニも登場。讃美歌のような特徴的なアルピーニ軍歌も流れる。これは作中で重要な意味を持つ。クラウディオの中隊はギリシャ軍の攻撃を受けて全滅した。しかし、クラウディオは負傷により気絶していたため奇跡的に生存しており、アルピーニ兵に助けられてアルバニア・ティラナの野戦病院に運ばれた。しかし、彼は部下を失ったショックで記憶を失い、自らの名前すらも忘れていた。

f:id:italianoluciano212:20180904222015j:plain

ギリシャ戦線の塹壕内のシーン

記憶を失ったクラウディオはその後病院を抜け出し、使命感から再び戦場に向かう。戦死したM大隊の指揮官ティレリ中隊長の名前を借りてロシア戦線に出征することになる。興味深いことに、敵であるソ連兵はドイツ兵ほど悪く描かれていない。相対するソ連兵とレコード盤とウォッカを交換し、握手するシーンは中々に印象的(しかし、その後にソ連軍から撃たれる)。クラウディオはこの東部戦線で後にデチマでも共に戦う、副官的存在であるドナーティと出会うこととなる。

一方、ローマに残っていたエットレは強制招集によって、陸軍士官(中尉)としてロシアのドン川戦線に向かう。エットレの部隊はソ連軍の戦車に対戦車装備もなしに立ち向かい、負傷しながらも手榴弾で戦車を撃破することが出来た。エットレは戦いで負傷しながらも、同じく負傷した部下と共に撤退する。エットレたちは撤退するドイツ軍のトラックに遭遇するが、ドイツ兵はイタリア兵を「臆病者」と罵倒して乗せてくれず、エットレの部下はその後死亡してしまう。ドイツ兵が友軍なのに助けてくれないのはいつものことだが、今回は部下が死ぬのでもっと酷い。

f:id:italianoluciano212:20190818122016p:plain

ソ連兵と取引をするシーン。友軍であるドイツ軍が「悪役」っぽく描かれるのに対して、ソ連兵に対してはそこまで悪く描かれていないのは興味深い。

一方、クラウディオの部隊は二日間歩きっぱなしだった。ソ連軍に追いつめられるが、ロシア人の民家を発見してそこに一旦退避する。その際、「ドイツ軍じゃない!イタリア軍だ!安心してくれ」というシーンは中々に印象的。しかし、民家に避難したものの、クラウディオの部下は直後に死亡してしまう。こうして再び部下を失ったクラウディオは、偶然遭遇したアルピーニ兵の軍歌を聴いて、部下を失ったショックと共に記憶を取り戻し、自らの名前と恋人(ジュリア)の名前を思い出して泣き崩れた。

前編はここまでで、後編では休戦からイタリア内戦、そして戦後が描かれる。バドリオ元帥の休戦ラジオ放送が流れ、ドイツ軍がローマへの侵攻を開始する。反ファシスト思想家の影響を受けて鞍替えしたジュリアはパルチザンに合流し、民間人を無視して街中でドイツ軍と銃撃戦を繰り広げる。エットレとエットレの母はこの戦いに巻き込まれ、エットレの母は銃弾を受けて亡くなってしまう。その後、エットレはジュリアによって巻き込まれ、成り行きでパルチザン側に属することとなる。一方、クラウディオは戦友と共にRSI側に忠誠を誓う。ロシア戦線以来のクラウディオの副官的存在、ドナーティもこれに加わり、名誉のために戦うことを誓った。彼らは「デチマ・マス」に入隊する。

f:id:italianoluciano212:20190818121853p:plain

デチマ・マスに入隊したクラウディオ(右)とドナーティ(左)

エットレとジュリアはパルチザンとして、RSIに忠誠を誓ったファシスト高官の暗殺に関わるが、この高官はクラウディオの父、アドリアーノ・ヴァルチだった。パルチザンとRSIの対立は日に日に激化していき、相貌なパルチザンの男ブレスキは、見張りのデチマ少年兵を拉致、個人的な恨みから殺害した。デチマとパルチザンは「兄弟殺し」を防ぐために協定を結んでいたが、ブレスキのこの行動は協定違反であり、ロンバルディアの山岳地帯でデチマとパルチザンの戦闘が発生した。デチマ側の報復行為も日に日にエスカレートしていき、クラウディオの上官はパルチザンに関係すると思われた市民の殺害を命じ、クラウディオはこれに抗議したが、防ぐことは出来なかった。

そして、RSIとパルチザンの対立は戦後にまで及ぶこととなる。パルチザン側によるファシスト狩りが行われ、クラウディオも命を狙われることとなる。

第二次世界大戦時のイタリアがどのような感じだったか」というのが非常にわかりやすく、ドラマチックに描かれている良い作品だ。WW2イタリア軍事史のざっくりとした内容を把握したいならオススメ。DVDも日本語版がある。

なお、日本語版のパッケージには何故かP40重戦車が描かれているが、P40重戦車は作中に登場しない。しかも表紙の兵士はイタリア兵ではなくドイツ兵。何故だ。

 

白い船

f:id:italianoluciano212:20180904215748j:plain

白い船

陸軍の映画が続いたので、今度は海軍の映画を見てみよう。

紹介する映画は『白い船』。原題は"La nave bianca"。

イタリア映画の巨匠、ロベルト・ロッセリーニの長編第一作。1941年公開。

中盤まではプンタ・スティーロ海戦を描き、そこからは病院船のシーンを描く。プンタ・スティーロ海戦は第二次世界大戦時の地中海初の大規模海戦で、イタリア主力艦隊と英国主力艦隊がイタリア・カラブリア地方のプンタ・スティーロ沖にて衝突した。戦時中の映画なので、なんと戦艦「ヴィットーリオ・ヴェネト」を始めとする実物の伊艦隊が登場。それだけでもめっちゃ興奮するぞ!

f:id:italianoluciano212:20190818122438p:plain

戦艦「ヴィットーリオ・ヴェネト」から発艦するRo.43水偵。戦時中の映画なので実物の兵器の数々が登場!

作中で描かれているのはプンタ・スティーロ海戦だが、実際にプンタ・スティーロ海戦に参加したのはコンテ・ディ・カヴール級戦艦の「ジュリオ・チェーザレ」及び「コンテ・ディ・カヴール」。映画で登場するのはリットーリオ級戦艦の「リットーリオ」及び「ヴィットーリオ・ヴェネト」でいわば代役として登場する形だ。逆に最新鋭の戦艦が代役で登場するのは興味深い。作中では「ヴィットーリオ・ヴェネト」の機関室が敵戦艦からの砲撃を受けて損傷する場面があるが、これは史実のプンタ・スティーロ沖海戦で戦艦「ジュリオ・チェーザレ」が戦艦「ウォースパイト」の砲撃を受けて機関室を被弾する場面に由来している。

「ネオレアリズモ」映画の先駆者ともいわれる作品であり、またファシスト政権のプロパガンダ映画という側面も持つ。所謂、ロッセリーニ監督の「戦争三部作」の一つとしても知られ、イタリア主力艦隊が登場する貴重な映画でもある。イタリア艦に興味ある人には是非見てもらいたい作品だ!

 

アルファ、タウ!

f:id:italianoluciano212:20180904220340j:plain

『アルファ、タウ!』

海軍映画第二弾、『アルファ、タウ!(Alfa tau!)』。

潜水艦「エンリコ・トーティ」の活躍を描いた作品で、終盤の英潜水艦「トライアド」との死闘は見もの。1942年公開。イタリア潜水艦の活躍を描いた珍しい作品だ。潜水艦映画というとUボートものは結構多いのだが、イタリア潜水艦映画は全然無い。カッコいいのになぁ...

f:id:italianoluciano212:20190818122337p:plain

海軍の食事シーンも描かれている。

主演の一人として実際に潜水艦「シィレー」の艦長であるブルーノ・ゼリク少佐が出演している点も面白い。最近話題にしたイタリア海軍の食事風景も描かれているぞ。
なお、ゼリク少佐は撮影後にハイファ攻撃に参加するが、英海軍に潜水艦「シィレー」が撃沈されて戦死している。この「シィレー」の残骸は現在もローマのヴィットリアーノで見る事が出来る。

興味深いシーンとしては、戦時中の映画なのでドイツ軍がわる~く描かれてはいない点だ。作中で登場するドイツ軍(海軍のUボートだが)は「トーティ」に協力してくれる、頼もしい友軍という感じだ。なんか新鮮である(イタリア戦争映画に毒され過ぎ)。あとは、空軍との協力シーンがある。「トーティ」が着水した空軍の水上機に燃料を分けてあげて、その後水上機は無事離水する、というシーンである。イタリア海軍と空軍は割と仲の悪い(というか連携出来てない)エピソードがあるが、これはおそらくそういう「両者のいがみ合いやめようぜ!」的な意図があったのかもしれない。というか、イタリア空軍が出てくる映画って珍しいのでなんか新鮮である。

 

 

潜航雷撃隊

f:id:italianoluciano212:20180904220847j:plain

『潜航雷撃隊』

イタリア映画ではなく英国映画だが、イタリア海軍を描いた映画として紹介。
1958年公開の英国映画『潜航雷撃隊』は、英海軍のライオネル・クラブ大尉を主人公にした作品で、主にジブラルタルでの英海軍と伊海軍の攻防戦を描く。

冒頭シーンではアレクサンドリア港攻撃での英戦艦「クイーン・エリザベス」と「ヴァリアント」の撃沈が描かれている。イタリア海軍の「デチマ・マス」が敵側で登場し、人間魚雷部隊やウォーモ・ラーナ部隊が脅威として描かれている。キャッチコピーには、「世界最強のイタリア潜水部隊」とまで書かれている。

これに対し、英海軍のクラブ大尉が練度も足りない潜水部隊を指揮しながらも、伊海軍のデチマからジブラルタルを守るために奔走する、という流れ。

アルヘシラスの工作船「オルテラ」も登場。しかし、オチを付けるためか、ラストシーンでは「オルテラ」の居場所が特定されて撃沈されている。なお、史実的には終戦まで「オルテラ」号の居場所を英軍は把握できなかった。

上に貼ったポスターでは伊海軍のウォーモ・ラーナ部隊によって空母が撃沈されているが、ジブラルタルで空母は撃沈されていない。

 

いかがだっただろうか?

是非皆さんにもイタリア戦争映画を見て、「イタリア軍って実際こんな感じだったのか」という感じを体験して欲しい。

他にも面白そうな映画を見つけたらどんどん紹介していきたいと思う。ではまた。

 

↓こちらは伊空軍が出てくる映画まとめです!

associazione.hatenablog.com

 

イタリア軍の将軍が出てくる映画まとめはこちら

associazione.hatenablog.com