Associazione Italiana del Duce -ドゥーチェのイタリア協会へようこそ!-

同人サークル"Associazione Italiana del Duce"の公式ブログです。

水雷艇「カラタフィーミ」の戦い ―フランス艦隊に単艦で立ち向かった海の勇者―

1940年6月10日、イタリア王国は英国及びフランスに宣戦布告し、第二次世界大戦に参戦した。僅か2週間程で終了した対フランス戦において、イタリア陸軍は準備不足からフランス軍の要塞線攻略に多くの被害を被った事で知られているが、イタリア海軍の対仏戦における行動はあまり知られていない。そこで、フランス重巡艦隊に勇敢にも単独で立ち向かい、撃退することに成功し、更には無事に帰還したイタリアの水雷艇「カラタフィーミ」のエピソードを紹介しよう。

f:id:italianoluciano212:20181110225907j:plain

海の勇者、水雷艇「カラタフィーミ」

「カラタフィーミ」はクルタトーネ級水雷艇の一隻で、1924年5月29日に就役した。建造当初は駆逐艦であったが、1938年に水雷艇に艦種変更となった。
第二次世界大戦時、艦長はジュゼッペ・ブリニョーレ(Giuseppe Brignole)中尉で、休戦まで彼が「カラタフィーミ」を指揮した。「カラタフィーミ」は開戦時に既に旧式艦であったが、他の水雷艇と同様に船団護衛、対潜水艦戦、機雷敷設任務に従事することとなった。

f:id:italianoluciano212:20181111000120j:plain

「カラタフィーミ」の護衛対象であった機雷敷設艦「エルバノ・ガスペリ」

イタリア参戦から3日後、1940年6月13日の夜に機雷敷設艦「エルバノ・ガスペリ」を護衛し、リグーリア海岸で機雷敷設任務に従事していた。その時、フランス海軍はリグーリア海岸工業都市に艦砲射撃を行うため、重巡艦隊を派遣していた。フランス第三艦隊司令官であるエミール・デュプラ提督は重巡「アルジェリー」を旗艦とし、リグーリア海岸砲撃に向かった。

f:id:italianoluciano212:20181110232202j:plain

リグーリア海岸攻撃艦隊を率いたフランス海軍の第三艦隊司令官、エミール・デュプラ海軍中将。

デュプラ艦隊は三つのグループに分けられており、一つ目のグループがデュプラ提督が直接指揮する「アルジェリー」を旗艦とし、重巡「フォッシュ」、そして6隻の駆逐艦で構成された。これは、サヴォーナ周辺の工業地帯を目標とした。二つ目のグループは、重巡デュプレクス」と重巡「コルベール」、そして5隻の駆逐艦で構成された。これは、ジェノヴァへの直接攻撃を目的とした。更に三つ目のグループは三隻の駆逐艦と四隻の潜水艦で構成されていた。このグループは後方支援を担当し、二つのグループをサポートしつつ、イタリア海軍の介入を妨害することを目的とした。

デュプラ提督率いる一つ目のグループはサヴォーナ及びヴァード・リーグレの工業地帯を砲撃した。ここではイタリア側の対応は遅れ、「アルジェリー」及び「フォッシュ」から放たれる砲弾によって工業地帯は被害を受けることになった。イタリア海軍は直ちにMAS艇部隊を発進させたが、フランス艦隊に効果的なダメージを与える事は出来なかった。

f:id:italianoluciano212:20181110233025j:plain

「カラタフィーミ」艦長ブリニョーレ中尉(左の人物)

「カラタフィーミ」艦長ブリニョーレ中尉は、翌日となった6月14日の朝4時、双眼鏡でフランス艦隊を発見した。場所は丁度サヴォーナとジェノヴァの中間であった。この艦隊はジェノヴァ攻撃を目標とする第二グループのフランス艦隊で、重巡デュプレクス」「コルベール」、駆逐艦「ヴォートゥール」「アルバトロス」「ゲパール」「ヴァルミ」「ヴュルデン」の計7隻で構成されていた。

f:id:italianoluciano212:20181110234632j:plain

ジェノヴァを砲撃したフランス重巡デュプレクス

ブリニョーレ中尉は、機雷敷設艦「エルバノ・ガスペリ」を撤退させ、今まさにジェノヴァを砲撃している重巡2隻・駆逐艦5隻、計7隻から構成されるフランス艦隊に「カラタフィーミ」単艦で勝負を挑んだのである。戦闘はジェノヴァ沖で行われた。戦闘が開始されると、陸上側も行動を起こした。沿岸要塞と装甲列車が「カラタフィーミ」を援護したのである。しかし、「カラタフィーミ」は主砲と魚雷を活用して攻撃したが、高速能力を誇るフランス艦隊はそれを回避していった。「カラタフィーミ」は駆逐艦「ヴォートゥール」及び「アルバトロス」を追撃したが、その際に駆逐艦「アルバトロス」は砲弾が命中した。これをイタリア側は「撃沈」と確認したが、実際は撃沈まではしておらず、「アルバトロス」は中破した状態であった。

f:id:italianoluciano212:20181110235601j:plain

フランス艦隊と戦う水雷艇「カラタフィーミ」(映画『Alba di guerra sul Mar Ligure(リグーリア海の戦争の夜明け)』のワンシーン)

フランス艦隊司令官デュプラ提督はこの「カラタフィーミ」の突撃を受けて、イタリア海軍の増援が来ることを恐れ、砲撃艦隊に撤退を命令した。「カラタフィーミ」は単艦でフランス艦隊に突撃し、これの撃退に成功したのであった。更にはリグーリア海岸への砲撃の被害も小規模なものであった。旧式の水雷艇が、たった一隻で7隻(内2隻は重巡)の艦隊に立ち向かい、それの撃退に成功し、更には無事に帰還したという例は海軍史上でも中々無いだろう。ブリニョーレ艦長はこの功績によってイタリア軍最高名誉である金勲章を受勲されて英雄となった。LUCEによって彼の功績を讃える映画『Alba di guerra sul Mar Ligure(リグーリア海での戦争の夜明け)』も作られている。

 

イタリア海軍とフランス海軍の戦いは期間が短かった上に大規模な海戦が起こらなかったため、マイナーになりがちではあるが、こういった興味深いエピソードもあるのである。そして、「第二次世界大戦におけるイタリア最後の海戦」も、1945年にリグーリア海にてフランス海軍とイタリア社会共和国(RSI)海軍によって行われた。最初期の海戦と最後の海戦が、相手はフランス海軍で、場所はリグーリア海というのは何とも感慨深いものがある(個人的な感想ですが)。こういった両国海軍のエピソードでもっと面白いものがあったら、どんどん紹介していきたい。